
建設業の2024年問題と働き方改革|行政書士の許可・経審業務への影響【2026年版】
建設業の2024年問題は、行政書士の建設業許可・経審業務に「許可要件そのものの変更」としてではなく、「顧客(建設業者)の体制変化が経営事項審査(経審)の社会性評価(W点)や届出に波及する形」で影響します。結論から言えば、2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用された結果、担い手確保・社会保険加入・CCUS登録といった「働き方・処遇」に関する取り組みが、経審の評点や顧客の体制届出に直結するようになりました。
本記事は、行政書士が顧客の建設業者に対して行う代行実務の視点で、2024年問題の概要、許可・経審業務への波及、そして更新・経審のタイミングで体制変化を汲み取り付随業務化する進め方を整理します。なお現場の施工管理・労務改善の手順そのものは建設業者本人の領域のため扱いません。

建設業の2024年問題とは|働き方改革の概要
建設業の2024年問題とは、2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用された結果として生じる、人手不足・工期への影響・処遇改善コストの増加などの総称です。長く猶予されてきた規制が他産業と同じ水準で適用されたことで、建設業者の労務体制が大きく動くきっかけになりました。
時間外労働の上限規制の内容
時間外労働の上限規制は、労働基準法第36条(いわゆる36協定)に基づく時間外労働に法的な上限を設けるものです。建設業もこの規制の対象となり、原則・特別条項の上限は次のとおりです。
| 区分 | 上限時間 | 根拠・出典 |
|---|---|---|
| 原則 | 月45時間・年360時間 | 労働基準法第36条 |
| 特別条項あり | 年720時間以内、複数月平均80時間以内、単月100時間未満(休日労働含む) | 労働基準法第36条 |
| 建設業への適用開始 | 2024年4月1日(災害復旧・復興事業には一部例外あり) | 厚生労働省「建設業の時間外労働の上限規制」 |
この早見表の数値は厚生労働省の上限規制の枠組みに基づきます。建設業者本人が現場運用をどう変えるかは事業者側の判断ですが、行政書士は「規制適用後の体制」を前提に許可・経審の手続きを設計することになります。
建設業に2024年4月から適用された背景
建設業はもともと工期や天候の制約が大きく、長時間労働が常態化しやすい業種でした。そのため2019年の法改正による上限規制の適用が、建設業については2024年3月末まで猶予されていました。
この猶予が終了し2024年4月から本則適用となったことで、建設業者は労働時間の管理と担い手の確保を同時に進める必要に迫られています。担い手確保・処遇改善は、後述する経審の社会性評価(W点)とも接点があり、行政書士業務に波及します。
行政書士の許可・経審業務への波及
2024年問題は許可要件そのものを直接変えるわけではありませんが、経審の社会性評価(W点)と顧客の体制届出の両面で行政書士業務に波及します。この章だけで「許可・経審のどこに効くか」が分かるよう整理します。
経審の社会性評価(W点)への波及
経営事項審査の総合評定値(P)は、完成工事高(X1)・自己資本等(X2)・経営状況(Y)・技術力(Z)・その他の審査項目=社会性等(W)の5項目を加重評価して算定されます。このうちW点は、労働福祉・処遇・担い手育成に関する取り組みを評価する項目で、2024年問題と関連が深い領域です。
| W点の評価項目 | 評価内容 | 2024年問題(働き方・担い手確保)との関連 | 行政書士が確認する書類 |
|---|---|---|---|
| 労働福祉の状況 | 雇用保険・健康保険・厚生年金・退職一時金・法定外労働災害補償 | 高(社会保険加入・処遇が前提) | 保険加入を確認できる資料 |
| 建設業の担い手の育成・確保 | 若年技術者・技能者の育成、女性活躍等の取り組み | 高(人手不足対応と直結) | 取り組みを確認できる資料 |
| CCUS(建設キャリアアップシステム) | 事業者登録・技能者の就業履歴蓄積 | 中〜高(処遇可視化の基盤) | 登録状況を確認できる資料 |
W点を含む総合評定値(P点)全体の仕組みと上げ方は、経審の評点(P点)の仕組みと上げ方で詳しく扱います。W点の各項目の点数・配点は国土交通省の経審告示で執筆時に確認する設計です。
技術者の配置・専任への波及
働き方改革で労働時間がタイトになると、技術者を複数現場でやりくりする余地が狭まり、配置や専任の論点が顧客から相談されやすくなります。ここで混同が起きやすいのが、「許可要件としての営業所技術者等(旧称:専任技術者)」と「現場配置の主任技術者・監理技術者」の違いです。
行政書士が顧客に説明する論点は、許可申請・維持に関わる営業所技術者等の要件です。現場配置技術者の専任や兼務の運用そのものは建設業者本人が判断する施工体制の領域のため、ここでは扱いません。両者の整理は、技術者制度の専門記事で別途解説する設計です。
許可要件そのものへの直接影響は限定的という整理
誤解しやすい点として、2024年問題によって建設業許可の要件(経管・営業所技術者等・財産的基礎など)が直接変わるわけではありません。要件の条文が改正されたのではなく、規制適用後の体制を前提に手続きを進めることになる、という整理が正確です。
ただし、社会保険への適切な加入は許可要件にも経審W点にも関わるため、2024年問題を契機に体制を見直す顧客には、許可維持と経審加点の両面から接点を持てます。2024年問題を含む建設業の制度動向全体は、建設業の制度・法改正動向まとめで俯瞰しています。

行政書士が更新・経審のタイミングで汲み取る付随業務
2024年問題への対応は、行政書士が顧客と接する更新・経審のタイミングで体制変化を汲み取り、付随業務として設計する余地があります。営業をかけるのではなく、定例の手続きの中で自然に確認する設計が現実的です。
更新・経審の面談で確認すべき体制変化
更新申請や経審の受審時は、顧客の体制を棚卸しする好機です。次の3点を確認することで、許可維持と経審加点の両面の論点を拾えます。
| 確認項目 | 確認の目的 | 関連する手続き |
|---|---|---|
| 社会保険の加入状況 | 許可要件・W点(労働福祉)の前提 | 変更があれば変更届 |
| CCUS登録の有無 | W点(担い手確保・処遇可視化)の加点余地 | 登録代行は付随業務化の余地 |
| 役員・技術者の異動 | 経管・営業所技術者等の変更届の要否 | 変更後2週間以内の届出 |
建設業許可HUBは、顧客ごとの許可業種・許可番号・有効期限・経管/営業所技術者等の情報をマスタ管理し、更新・決算変更届・経審の期限を自動計算してダッシュボードとメールで通知する設計です。更新・経審のタイミングで体制変化を確認する接点を取りこぼしにくくする狙いがあります。
期限・スケジュール管理で取りこぼさない仕組み
体制変化を汲み取るには、まず顧客と接する手続きのタイミングを取りこぼさないことが前提です。経管・営業所技術者等の変更届は変更後2週間以内、決算変更届は事業年度終了後4ヶ月以内、更新申請は有効期間(5年)満了日の30日前までと期限が決まっており、これらを軸に顧客接点を設計できます。
顧客社数が増えると、更新・決算変更届・経審の期限が月単位で重なり、面談機会の取りこぼしが起きやすくなります。許可情報・期限を一元管理し自動で通知される仕組みがあれば、体制確認の接点を計画的に持てる余地が広がります。許可・経審を含む建設業許可業務の年間実務の全体像は、行政書士の建設業許可業務 完全ガイドを参照してください。

よくある質問
Q. 建設業の2024年問題とは何ですか?
A. 2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制(原則 月45時間・年360時間、特別条項でも年720時間以内など/労働基準法第36条)が適用された結果として生じる、人手不足・工期への影響・処遇改善コストの増加などの総称です。建設業は規制適用が2024年3月末まで猶予されていたため、他産業より遅れて本則適用となりました。
Q. 2024年問題は建設業許可の要件に影響しますか?
A. 許可要件(経管・営業所技術者等・財産的基礎など)の条文が直接改正されたわけではありません。要件そのものは変わりませんが、社会保険への適切な加入など、規制適用後の体制を前提に手続きを進めることになります。社会保険加入は許可要件にも経審のW点にも関わる論点です。

Q. 時間外労働の上限規制は経営事項審査の評点に影響しますか?
A. 上限規制が直接P点を増減させるわけではありませんが、関連する社会性評価(W点)の項目に波及する余地があります。W点は労働福祉(社会保険加入等)・担い手の育成確保・CCUSなどを評価するため、処遇改善や担い手確保の取り組みがW点の加点余地につながります。各項目の点数は国土交通省の経審告示で確認する設計です。
Q. 行政書士は2024年問題について顧客にどんな対応を提案できますか?
A. 更新申請や経審の受審といった定例の手続きのタイミングで、社会保険の加入状況・CCUS登録の有無・役員や技術者の異動を確認し、必要な変更届や経審W点の加点余地につなげる進め方があります。営業として持ち込むのではなく、既存の手続きの中で体制変化を汲み取る付随業務としての設計に余地があります。
Q. CCUS(建設キャリアアップシステム)の登録は2024年問題と関係がありますか?
A. 関係があります。CCUSは技能者の就業履歴を蓄積して処遇を可視化する基盤で、担い手確保・処遇改善という2024年問題の論点と重なります。経審のW点でも加点対象とされており(点数は国交省の経審告示・CCUS資料で確認)、登録代行は行政書士の新規業務領域になり得ます。
まとめ
建設業の2024年問題は、許可要件そのものを直接変えるものではなく、顧客の体制変化が経審の社会性評価(W点)や届出に波及する形で行政書士業務に影響します。時間外労働の上限規制の適用を起点に、社会保険加入・担い手確保・CCUS登録といった取り組みが評点や手続きに直結するようになりました。
行政書士にとっての勘所は、更新・決算変更届・経審という定例の接点で顧客の体制変化を汲み取り、変更届やW点の加点余地につなげる設計です。まずは顧客リストの更新・経審の予定に「体制確認」の項目を一つ加えることから始めてください。

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